思い出の出来事3

2009年04月12日

私の楽しみの1つは季節の移ろいとその表情を観察することである。

田園調布の銀杏の並木は、暖冬のせいか、12月を過ぎて最後の葉を落とす。傍らの山茶花はすでに花を咲かせ、木枯らしもこの花にはいささかてこずっているように見える。
そういえば最近はめっきり雪が少なくなった。以前はこの坂道をたっぷり雪が積もり、スキーを持ち出した人々も見えたのに。何度も夜半に足を滑らせて帰った記憶がよみがえる。

私の家の近くに等々力渓谷から流れる小川(と呼ぶには少々きれい過ぎるが)がありそのほとりに1本の彼岸桜がある。決まって12月に花を咲かせ、散るのはソメイヨシノと一緒、つまり4ヶ月以上もほろはらと寒風の中咲いているのである。華やかな咲き方ではないが、毎年私に何かを伝えてくれる。

私のイメージでは、1月、お正月を迎えると、急に太陽が明るくなるような気がしている。

東京の冬は茶色一色ではない。あちこちでたくましく青々と葉を茂らせた草花がある。

タンポポもクローバーも冬に姿を隠すこともなくなって、花を持つタンポポもあるほどだ。多摩川の変化は近年、大根と菜の花が群生したことだ。ピリッと辛い島大根は根こそ大きくはなく繁殖力はきわめて強い、ここ数年でかわらを埋め尽くすほどの勢いに、冬景色は変わり行く。

2月半ば、河津桜の便りが春をはこぶ頃、梅が咲き始める。日没は5時を過ぎて、急激に春の足音が近づくのを感じる。

「グワ、グワ、グワっと、騒がしく冬を過ごした鴨達も間もなく北へと飛び立ってゆく。そうしてどんよりと流れの重かった川面では光を反射して、幾分か、流れが軽やかな音をたて始める。

この川部ではまた、様々な鳥たちが生息している。代表は定着し渡りを忘れた鴨のつがいだろう。

鷺は青鷺が精悍だ、数は白鷺に劣るが威風堂々としている。カモメは定期的に海とこのあたりを行ったりきたりしている。目当ては「カモメの叔父さん」、どこからか食パンの耳を大量に仕入れ毎朝散歩の傍らカモメに餌付けしたのだ。

カモメの飛び方はなぜかグライダーに似ていて、優雅に舞う。そして最近、鵜の群集がやってくる。鵜は厄介だ、もぐって魚を取るから、鷺は手に負えない、片足を上げゆっくりと静かに漁場に陣取り、じーっと魚が来るのを待っているところに、鵜が水中をかき回すから、さっぱり魚が取れない。

この招かざる珍客に腹を立てた鷺が逆襲をする。何時もは単独行動し、縄張りを張る鷺たちも誰かの合図であちらからも、こちらからも、どこにこんなにいたのかと思うほどの鷺が集まり、片側に陣取る、そしていっせいに鵜たちに攻撃を仕掛ける。鋭い鷺のくちばし攻撃に、鵜は水中にもぐりかく乱戦術に出るが、結局鷺の攻撃が勝り、鵜たちは去ってゆくが、決して懲りたのではない、風物詩のように結構繰り返されているのだ。

カラスはその点頭がいい、人様の食べ物はよほど気に入っているのか、面倒な漁などには興味がないようで、水を飲む以外は鷺を怒らせることはしない。

このカラスに悩む野良猫たちがいる。

思い出の出来事3

2009年04月12日

思い出の出来事2

2009年04月04日

アメリカから帰国し、以来18年間紅茶党として一切コーヒーから遠ざかっていた私がイタリア研修である。あれはピサ空港であったと思う、プレゼンテーションでデザイナーとフィレンツェに向かう空港でエスプレッソを飲むことになった。

少々気が引けたが砂糖を入れて勇気を出して飲んでみた。

結果は胃に痛みは全く感じず、まったりとしたカカオのような風味が、まろやかに喉から湧き上がり、コーヒーとは異なるものだと実感した。また日本で飲んだ事のあるエスプレッソとも全く異質の物であった。それ以来私はエスプレッソだけは受け入れるようになり、やがてコーヒーもまた飲めるようになっていった。

いったい、コーヒーとエスップレッソとどのような違いがあるのだろうか?

皆様もご存知のようにコーヒーの入れ方には様々な方法が存在するが、旨みと風味を保つには当然挽きたてを入れるに限る。サイホンで湯に混ぜるか、ドリップで湯の圧力で落とすか、それぞれに一定の時間をかけて抽出するが、この抽出の時間に出来上がるコーヒー及びエスプレッソに含まれる成分に違いが出てくる。

コーヒーの成分はたんぱく質、油分、粗繊維、カフェイン、タンニン、有機酸、ミネラルです。

私がエスプレッソを受け入れたのはおそらく、カフェインと有機酸の影響ではないかと分析する。

エスプレッソはきわめて合理的でコーヒーを魔法のようにクリーミーに変える魔術師のようだと思う。イタリアの豆はアフリカ産が多く南アメリカ(ブラジル、コロンビア)に比べると小粒である。一般的に言われるエスプレッソの焙煎は濃いと言われますが、私が持ち帰り分析したところイタリアのエスプレッソの焙煎濃度は日本の一般的なコーヒーの焙煎とほとんど変わりませんでした。そこで日本にある豆で同等の焙煎でエスプレッソを試したら、非常に酸味の強い飲める品質ではありませんでした。結論を申し上げますと。日本で美味しいエスプレッソエを飲もうとしたら、イタリアから豆を取り寄せなければ不可能と言うことです。

エスプレッソは、備え付けのミールで挽く、そして9気圧の圧縮蒸気で一気に旨み成分だけを抽出する。一瞬ですから雑味成分が溶け込まない。残念ながらカフェインは時間が少ない分他のコーヒーに比べれば少なくなるが、素晴らしい副産物がついてくる。あのクリーミーな泡である。

豆には主として二酸化炭素の気体成分が含まれていますが、圧力をかければそれだけ多くの二酸化炭素が液体に溶け込み、それがクレマと呼ばれる魔法の泡を作り出すのです。

また含有する有機酸も抽出時間が短い為、酸化をしない。カフェインと酸化この2つが、アメリカでヒーターの上に置かれた煮詰まり、極度に酸化したコーヒーに拒否反応を示した私の体から

再びコーヒーを受け入れるよう導いてくれたのだと思う。

もし皆さん、エスプレッソは濃くて苦いコーヒーと思っていらっしゃる方がいましたら、一度エノテーカ ピンキオーリにお越しください。絶対にエスプレッソの概念を変えて見せましょう。

クリーミーでまろやかに香り、

濃縮感はカカオの深みを与え、

喉越しはきわめて柔らかく、

琥珀の液体は貴品に満ちている。

一口が与える感動は、

貴方の夢の扉を開けてくれる。

それが、エスプレッソです。

2009年03月27日

62年型のマスタングは赤いボディーにルーフは白く塗られていた。左フロントに少々のへこみ傷はあるが、大事にしているのだろう?

良く手入れされている。

シティーバンクの手前200メートルの路上に駐車し回転ドアから中に入り、整理番号を確認しサービスのコーヒーを口に運ぶ。男は10分ほど滞在し、番号を確かめ、腕時計を確認し渋い顔で用事を済ませずに店を後にする。

モニターには間違いなく写っていることだろう。

ここに来るのはおそらく2週間後。

こうして幾つの銀行を回っただろうか、一番目に付かない所に例の物があるのは、シティーバンクだったが、中でもセンチュリーシティーの支店が最も条件がよいように思う。だが客層が良すぎて、ラフな男のいでたちはいかにも人の気を引き目立ちすぎた。

その点サンタモニカは最高である。水着の男女が窓口で商談し合う光景は少し異様にも思えるが、心置きなく男は目的が達成できる。

男とは私であり、その目的とは「銀行の無料サービスコーヒー」のことである。

 

1ヶ月前にアメリカに渡り、700ドルで買ったムスタングで街の探索をするのが気に入っている。サンタモニカブルーバードは真っ直ぐと海に向かう、フリーウェイを使わずに行くと道は大きくアップダウンしながら青い海に向かう。夜8時頃海に向かって車を走らせれば、夕日が道の真ん中に沈んでゆく。なんとも心地良い、海に着く頃、夕陽は最大限に大きくなり海原に沈んでゆくのを一時眺めながらビールを口にはこぶ。ゆっくりと時の流れが見える1日の終わりは、賑やかな夜の始まりの前の静粛なのだろう。

こうして昼のコーヒーと夕暮れのビールを何度楽しんだのだろうか。ただ銀行のコーヒーは不味い。時間が経てば焼けていて、苦味だけが胃を刺す。お陰で3ヵ月後、一切コーヒーを受け付けなくなってしまった。以来1991年にイタリアに渡るまで、コーヒーを飲んだことがない。飲めば胃が切りきり痛むから避けていた。