ピッティー・パラスの朝食は質素であるが、楽しい。
パンはクロワッサン、ブリオッシュ、塩気のない独特のトスカーナパンなど6種類ほどが並び、フルーツは決して形の良くないバナナ、洋梨、リンゴ、オレンジ、この季節にベリー類はない。ペコリーノチーズとモルタデッラハムの盛り合わせは中央に置かれる。イチゴ、マーマレード、ブルーベリー、蜂蜜があり、数種類のヨーグルトが美味しそうだ。サラダ類やモッツァレッラ、卵料理は別注文となる故、テーブルにはない。
2種類のコーンフレークは朝食の定番である。
オレンジジュース、アップルジュース、ミルクにコーヒー、紅茶が用意されている。
私はまずオレンジジュースを2杯立て続けに飲み干し、ミルクを持ってテーブルに行く、パンを1つとヨーグルトにバナナと洋梨を取る。
ヨーグルトにバナナを切りいれ、洋梨も入れてたっぷりと食べる、牛乳を最低3杯は飲んでジョギングの後の身体を整える。
パンは私用ではない、そうスズメと鳩がほしがるのだ、こちらの鳥たちは友好的でスズメはテーブルにさえ上ってくる。従業員はあまり歓迎してないが客の特権であるとばかりに少しづつ、床を汚さないようにあげる事にしている。
これもフィレンツェの朝の恒例となりつつある。
「ボンジョルノ、シニョール サカマ。エノテーカ東京の調子はどうだ、ジョルジョとアニーは元気か?どのくらいいるんだ?」
すっかり顔なじみになって私も朝の情報交換の仲間入りだ。
「今日はこれからヴェネツィアに向かい、ルレ・エ・シャトーの会合が終わったらまた来るよ」
「そうか、じゃあまた後でな」
さて、部屋に戻り荷をまとめてチェックアウトをし、ロビーで迎えを待つとしよう。10時エノテーカを出発するといっていたから、普通ならここに9時45分、そしてエノテーカに向かい荷を乗せて出発だ。が、ここはイタリア、早くて10時だろう。
ところがすでに10時20分を過ぎても現れない。まあ、予想の範囲だから、待つことにした。
10時40分、電話も来ない、さすがにこれはおかしいと思い、すでにチックアウトを済ました後なのでフロントで電話を借りて連絡をした。
「ミスターサカマ、ユー シュッドゥ カム エノテーカ ナウ」
緊迫したアニー夫人の声に違和感を覚えながら、タクシーを呼んだ。タ
クシーが来るまでの15分、何があったのか想像がつかない、
アニー夫人は用件だけ言うと電話を切ってしまったからだ。
ただならぬ雰囲気だけが漂う。