エノテーカ ピンキオーリ誕生のエピソード-27-
2009年02月05日
フィレンツェと言う街には、こんなにも世界中から人が押し寄せるのか連日満席の日々が続く。そのエネルギッシュな光景は、なるほどこの偉大な遺産を持つイタリア人を、誇り高い気質と陽気な姿に変えてゆくのだろうと思う。
連日くたくたになるまで働き、日曜日は決まってジョルジョ氏が皆をつれて郊外のレストランに食事に行く。ジョルジョ氏もアニー夫人も日曜は午後には出勤し仕事をしている。いったい何時休むのだろうと気になる。シエナに程近い街道の脇にそのレストランはあった。正確にはトラットリアというべきだろう。10台ほどのパーキングスペースは庭の一部を使っており、様々な木々が生い茂る。
少し暗い入り口にバーカウンターがあり、似合わないピカピカのエスプレッソマシーンが目を引いている。正面には暖炉があり、シュミネとなっておりおそらくグリルが目玉のメニューであろう。
少し猫背の初老のおばあちゃんが出迎える。「ジョルジョ」「おー、アニー」と言って、泣かんばかりにしがみつく。見たところ本当に地方に根ざしたトラットリアのようだ。トスカーナ独特の皮の厚い、少しボソッとしたパンが大きな籠に山のように運ばれる。オリーブ、ラルド、生ハム、ブルスケッタが運ばれて、私は始めてラルドを口にした。オリーブオイルをたっぷりつけて呆ばると、このパンが魔法のように美味しくなる。最後に粉の香りがより戻り、素朴なパンは正に食事をする為にたどり着いた追求の結果なのだと知らされる。
ラルド、見れば豚の背脂の塊である、良くこんな物が食べれるなと、顔をしかめたら、アニー夫人に一括された。これは脂ではない。イタリアで豚の脂は「ストゥルット」と言い、ラルドは脂の意味ではないと言う。ラルドとは「ラルド・コロンナート・イン・コンカ」、海塩を打ち、ニンニク、シナモン、コリアンダー、ナツメグ、丁子、八角、オレガノ、セージなどの香辛料をたっぷりとすりこみ、かのミケランジェロが切り出した大理石の産地、カッラーラの大理石の槽に並べ10ヶ月以上熟成させた物である。すると、この動物性の油脂分はなんとコレステロール0の必須アミノ酸に変わると言うから、ビックリである。そうと知れば健康のために好んで食べるのがうれしいではないか。熱々のリッボリータや数々のパスタ、そして「アックアコッタ」がはこばれた。これこそが今日のメインのお話。まだジョルジョ氏がアニー夫人とワインバーを始めた頃、色々なレシピを参考にする為、毎週日曜日にここに訪れて「マンマローザのレシピ」を教わったと言う。パンの焼き方から、パスタの打ち方、豆料理、卵料理、などなど、そして鶏のブイヨンで野菜を煮込んで最後に卵の黄身だけ落とし、チーズをたっぷりかけたスープ「アクアコッタ」だ、そのアクアコッタはマンマが運んできた。懐かしそうに二人を身で、大きくなったわが子のように時々こうして会うのを楽しみにしているのだという、ジョルジョは取って置きのワインをお土産に持ってきていた。
何と誰が何を言っているのかさっぱり解らないほどに賑やかで、マンマローザも今日は酔っ払いだ。
カンパーイ!


