エノテーカ ピンキオーリ誕生のエピソード-18-

2008年12月05日

水浸しのバスルームを男二人バスタオルで水を吸い取り、何とか元通りにする頃、もう朝も空けてきた。待ちに待った湯船につかりながら、沸々と苦い思いがよみがえる。

歯ブラシもないし!こんな時間にルームサービスはしているかな?と言いながらセルジュはダイヤルをする。「歯ブラシと歯磨き粉がほしいんだけど」。

15分してドアはノックされた、「これでよければ!」渡された歯ブラシと歯磨き粉はどう見てもその本人が使っている物のようだ。「グラッチェ」と言いつつやんわりと返すことにした。

何で歯ブラシが部屋にセットされてないのだ?何一つ身の回りの品がない朝はやけに時間が経つのが遅く感じられる。朝食までまだ時間があるではないか?昨夜のうちに保険会社にお電話してあり、朝の830分に担当官がホテルに来る予定になっている。

到着した担当官は元警官で、いかにも凄みのある顔立ちをしている。そしてゆっくりと語り始めた、このようなケースはまず荷物は出てこない。列車に荷を預けるのは第一に鉄道側に預かり責任は発生しないのだと言う。荷物を置くスペースのチケットを購入しただけだから何の保障もされないし、誰も責任がないので荷を探すこと自体が難しいのだと説明された。

我々は保険の補償を頼りに被害届を書くことにした。

時間はすでに10時を回った頃、担当官は警察に行く途中が駅だから寄ってみようと我々を案内した。そして、いかつい顔の元警官はゆっくりと太い声で聞き始めた。

「この者たちの荷物が昨夜着かないとの事だが、中を見させてもらおうか?」

「エート、受け取り番号は?・・・・、  ああっシニョール! ちょうど今朝一番で着いております」

こうして我々の荷物は事務所の奥から現われた。

担当官は言う「昨日からあったのさ、移動されてなくて運が良かった」

感謝感激である。

ものすごく頭が混乱し、色々な感情を整理し切れず、おもーい空気が、いっぺんに吹き飛んで、何の問題もなくなったのである。この爽快な気分は何とも表現しがたい。

このいかつい男が頼もしく、我々は昼食に誘うことにした。ところがどうしても仕事があると言って断ったのである。熱く礼を言って住所を聞いた、後で御礼をするつもりである。

忘れられないローマの初体験はこうして無事に終わり、18:42分のエールフランスでパリにそして11:35分の夜の便でパリから東京に帰国したのでした。