初めてエノテーカ ピンキオーリにて本格的な?伝統的な?ディナーを終えたアターブル松屋の役員一行は、思いがけない歓待を受けイタリア宮廷料理の現代版ともいえる豪華な料理と、ワインとを合わせて飲むワインデグスタシオンを経験したのである。デザートワイン、グラッパまで入れると7種類。
いやはや、幸せな限りである。だが、何を飲んだのか、説明されても誰も覚えていない、そもそもワインの知識など誰にもなかったし、料理とワインがとてもよくマッチしていたことと、えらく年代物を出され感激したことは脳裏に焼きついた。
「加藤さん、明日の午後改めてお会いできないか伺ってもらえますか?」
大内社長は明らかに酔いからではなく、確かな確信を持ってそう告げられた。
ピンキオーリ氏に明日の面会を申し入れると、事務所から6枚の名刺を持って現われた。
先週の土曜日にこの方々が現れ、日本での出店を要請したという。全国展開しているレストランで、核となるレストランを作り、ノウハウを全国展開したいというので、お断りした。エノテーカ ピンキオーリそのものを日本に再現するのでなければ興味がない、ジョルジョ氏はキッパリとそう断言したのである。
その夜、ホテルに戻り、緊急会議が開かれた。
「あの地下のワインセラーを見たか?凄いねー12万本と言っていたね」
「あれ以外に、コニャックやアルマニャックが山ほどあるし」
「イタリアだけじゃないんだねー、フランス、ドイツ、カリフォルニアなど世界中のワインがありますね」
「奥様が料理長なのもユニークで、話題性があるよね」
「・・・・・社もいいとこ取りはいけないよ、やるなら徹底的に本物をやらないと、あれだけの物を1代で築き上げたのだから、そのプライドと熱意は認めないといけない」
酔っ払い集団の会話は、何ともフレンドリーでおおらかである。
しかしいつの間にか、話の方向性は誘致に動いていた。
「どうだろう加藤さん、可能性はありますか?」
帰り際にジョルジョ氏にそれとなしに匂わせたら、意味ありげな顔をしてましたからまんざらでもないと想います。」
「世界でただ日本だけが昨年の調査で、ワインの消費量が伸びていることに、凄く興味があると言っていました」
期待を持たせる一言に、誰もがその夜ぐっすり眠れたのは幸運の始まりでありました。